私だけの魔法の手。


お店の入口の所で背中を向けて立っている男の子は、黒の細身のパンツをブーツインで穿いていて、黒の七部袖のTシャツの上にグレーのTシャツを重ね着してた。
チラッと見えただけの横顔では顔はよく分からなかったけど、右側を短くカットして、左側が長めのアシンメトリーな髪型なのはすぐに分かった。



着飾っている感じじゃないのに、凄くオシャレに見えるのは、美容師という職業柄かその子のスタイルの良さか。
そんな事を考えながらお店の前に差し掛かると、殺気でも感じたのか、男の子がゆっくりと振り向いて視線がかち合う。




黒縁の眼鏡越し。
思わず息を呑んで立ち止まってしまったのは、切れ長の目の鋭さだけではなく。
その子を包むオーラみたいなものを感じたのと、一瞬その子に見惚れたせいだ。


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