もしも私がーcasket in cremtion。

 鞘からゆっくりと抜いてギラリと光る刀身をむき出しにした。

(何する気?)

 そのまま雪の壁と向かい合わせになると

「はっ!」と小さく気合を入れて雪の壁を切った。

 光が漏れる、が、すぐに
 
  ドドドド――

 上に積もっていた雪が落ちてきて、逆戻り。まあ、積もってるんだから普通そうなるよねと思った時

「来るよ。」

 靭は真っ直ぐ幟呉を見ながらそう呟いた。

「え?」

 私も幟呉を再び見ると、幟呉は真剣な顔をしてもう一度ゆっくりと刀を雪の壁へ向け、ゆっくりと空中で円を描いた。

 その瞬間 ドオン! という激しい音が響いた。私は自分の見た景色が信じられず、目を瞠った。
 
 幟呉が円を描いた通りに厚さ数十センチもある雪の壁が丸くなってそこから抜け落ちた。切ったというより、壁の一部が丸く抜き取られたような、そんな感じ。

 倒れる時も崩れずに円形を保っていた。その技も凄いけど、雪の破片が飛び散った時、幟呉の周りだけがスローモーションに見えて、何だか幟呉自身が自然と一体化したみたいで綺麗だった。
 私が呆然としていると

「すごいだろ?今のはゆっくりだったけど、幟呉が本気でやったら僕の眼でも見るのがやっとって感じなんだぁ。」

「お前、動体視力やたらと良いもんな。」

「へへへ♪まぁね、でも永璃だって負けず劣らずだろ?」

 無邪気に話す靭のセリフを聞きながら、私は後悔していました。

(ご、ごめんなさい、謝るから見逃してください。生意気言ってすみませんでした!勢いだったんです!勝てるわけありません!)

青ざめていく顔を自分で自覚しながら、開いた眩しい外を呆然としていたら、遠くの方で何かが飛んでくるのが見えた。
 こちらに近づいてくるみたい。
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