もしも私がーcasket in cremtion。
 
 *****

 山中に銃声が木霊する。

「ちっ!もう弾切れかよ!」

 靭は舌打ちして呟くと、顔の近くで銃を握り締め

「さっきから後ろの岩陰に隠れてんの誰?」
と冷たい声色で言うと

「おうおう、相変わらず「命中率100%」健在だな靭!拍手してやろうか?」

 軽く拍手しながら岩陰から出て来たのは永璃だった。

「何だ、永璃か。後ちょっとで発砲しちゃうとこだったよ……で?何か用?」

 言いながら銃に入っていた空薬莢を捨て、新しく詰めかえた。

「気づいてたくせに。お前がまたムシャクシャしてんじゃねぇかと思ってな。俺達に黙ってどっか行く時は大抵そうだろ?いい加減ムカつくと銃乱射する癖は止めた方がいいぜ?」

 言いながらタバコを銜え「それ、四発命中する前に何発撃ったよ?」と言うとタバコに火を点けた。

「ふん、つけてきたなら知ってるだろ?」

 不機嫌に答えると銃を岩に向けて構えた。

「何だよ、まだムカついてんのか?」

「そんなんじゃないよ。ただ……。」

「ただ?」

「モヤモヤするだけだよ!!」

 そう言いながら、弾を込めた分全部撃った。

「ダブったか?アイツに。」

「……っ」

 眉を顰めながら、銃を握り締め俯く靭に

「状況も同じ、性格もまぁまぁ似てる。お前があの年齢の頃だもんな。思い出さない方がおかしい。」

「……永璃だって人の事言えないだろ?永璃がダブったから、そんな事思ったんだろ?」

 そう問われた永璃は困ったように眉を顰め、俯いた。それを見ると靭はため息をついて

「ごめん、そんなんじゃないから・・ほら、僕らが任務外された事なんてなかったじゃん?だから、ちょっとムシャクシャしただけ。」

「そうか……じゃあ、そろそろ戻るか?」

「うん!」


 ******


「あれ?そういえばあの二人は?」

「今頃気づいたのか?・・あいつらは情が熱いからな、女の涙に堪えられなかったんじゃないのか?」

「何それ、似合わない。」

「そうだな。ダブったのかもな」

「え?」

「うおーい!おまたせ!」

 山に向う崖の坂道から靭が手を振りながら走って来た。後ろには永璃もいる。

「別に待ってない。」

 幟呉はそっけない返事を返した。

「ひど!幟呉ひど!永璃、幟呉が冷たいよ!」

「アハハ、それは前からだろ?」

 笑い飛ばしている永璃を尻目に、私はしきりに考えていた。

(ダブった?ダブったって、誰に?何が?)





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