僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
「どーぞ。」


そう言って、オレンジの箱を差し出す。


私は、それを受け取った。



震える手で、包みをあける。



ちょっと泣きそうにもなってきた。



箱の中から出て来たのは、明らかに手作りのトリュフ。



毒が入ってないのなんて、私が一番良く分かってる。




何度も何度の練習して食べきたそれをつまみ上げる。



ショックと情けなさで泣きそうになるのをグッと堪えて、口元に運ぶ。



口に入れようとしたその瞬間、グッと手首を掴まれた。



驚いて、波留を見れば、そこには悪魔の笑み。




「ねぇ、渚さん。」


悪魔の笑みをたたえたまま、波留が言った。



「もし、それが渚さんの作ったやつなら、俺に食べさせてよ。

 違うなら、そのまま渚さんが食べて。」



その言葉に、私は驚いて目を見開く。


「は・・・る?」


「なーに?」



「もしかして、全部知ってて・・・?」


動揺する私をよそに、波留は私の手首を自分のほうに引き寄せて、私の手からトリュフを食べた。



モグモグと食べる波留。


「波留?全部知ってたの?」


気が抜けたのか私の目から涙がこぼれた。



それを見て驚いた表情の波留。



それでも、次の瞬間、また悪魔の笑みをたたえてから私の耳元でささやいた。


「泣くくらいなら、初めから素直に渡してくれればいいのに。」



そう言って涙を舌で掬い取った。
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