僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
すぐに渚さんに聞かなかったのは、もっと彼女を追いつめたかったから。


気の強いあなたの仮面をはぎ取りたい。


追いつめて、揺さぶって、俺の事しか考えられない様にしたい。



今年のバレンタイン。




流石に、彼女持ちの俺に手作りをくれる人はいない。



なにげに、手作りは受け取らないとアピールしてあったせいもあるだろう。



だから、綺麗にラッピングされた既製品の中にいつの間にか紛れたオレンジの包みを見た時は嬉しかった。



もちろん、渚さんからチョコを貰えた事もだけど、これであなたをいじめられるから。



チョコについては何も触れずにバレンタインを過ごす。



デートに出かけたショッピングモールはどこもかしこもバレンタイン。



俺が自分からのチョコに気づいている事を知らない渚さんは物凄い居心地が悪そう。



いちいち動揺する彼女を見るのが楽しくて仕方ない。



家に帰って、ダンボールの中から取り出したオレンジの箱に動揺を隠せない渚さん。



まだだよ。


もっとだよ。



やりすぎて泣かしてしまった時に、わき上がったのはわずかな罪悪感とそれを上回る快感。



そんな彼女を宥める様にキスをする。


今日見た、彼女の狼狽えた表情の数だけ。



ゴメンね、渚さん。


あなたを泣かせて喜ぶような俺で。




どうかいつまでも、俺の横で強がっていて。


俺がそれを崩すから。


俺だけの前で泣いて欲しい。



誰よりもあなたを愛しているから。


それに、


「意地悪したお詫びに優しくするから許して?」



こんな俺にした責任はあなたにもあるから。





おわり
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