嘘つきな僕ら



『…みんな…』




『俺は……俺も、行きたいです…!』



『全員、今日から俺の言う通りにしてもらう。
 今から俺の家に来い』


お兄さんはそう言うと、みんなのいる入口へと向かう。



『あ…あの…』


俺はその背中に向かって声をかける。



『…憎くないんですか…?
 俺…口でいうことと、実際に由莉さんにしてること…違うのに…』


『憎んでたらこんな面倒くさいことを請け負ったりしないよ、俺』


そう言って、お兄さんは振り向く。


『由莉は可愛い妹だよ?
 その由莉が泣いても好きだって言ってんだから兄貴としては仕方ねぇよ?』



『それに、良之と会って、弟が欲しかったていう夢、叶えさせてもらったし』



弟が欲しかったっていう夢…


『由莉とどうとかじゃなくて、なんか俺がお前のこと、気に入ってんだよ』


そう言って、照れくさそうに、でもその顔はすごく優しいものだった。



『ありがとうございます』


俺はそう言って、お兄さんの後に続く。


合流した守とタケと加藤にも感謝する。



『…ありがと』


『何、改まってんの、気持ち悪いから、そういうの!』


『今日から、俺たちは“全員で、春は桜坂”だかんな』


『それに…由莉が幸せそうじゃなきゃ…俺も勉強に身が入らないしな』


それぞれの言葉に、やっぱり、“ありがとう”と言いたい。


『守も、色々とごめん…』


俺の言葉に守は“一発殴らせろ”、そう言って、軽く腕を小突いてきた。


でも、本当にみんなも一緒だと、心強い。


頑張れる気がする。


いや、頑張るんだ。


春は絶対に彼女のいる学校に行く。











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