コトノハの園で




 ―*―*―*―*―*―


休憩終了まではもう少しあったけれど、今日はもう、ここにはいられなかった。


自分に落胆してしまい、このままの状態で仕事に戻るのもどうかと……立て直す時間が必要だった。


出来うる限り、中庭は憩うためだけに使いたい。


先にこの場を去ると言う深町さんを待つのももどかしくなって、不自然に、僕は館内に戻ってしまった。


少しばかり、動揺したんだ。


帰ろうとする深町さんの背中を目にし、思い出した――確か以前にも、と。


ああそうだ。言われた通り、少し前のこと――





――閉館時刻を過ぎても熱心に読書する深町さんに、僕はどう伝えようかと足踏みをしていた。


散々迷い、声をかけると、深町さんは一瞬で理解してくれ、帰ってくれた。


……そして……落ち込んだ。


現実はこんなにもあっけなく過ぎていってくれるのに僕は……。


もっと変わらなければ。あの時、切に思ったのだった。


そんな、人生にもかかわる局面、きっかけのひとつでもある人のことを、これほどさっぱりと忘れてしまっていたなんて。


女性だからとかそんな理由を、僕の情けない部分が肯定するとか……どこかで、思ってしまっているのか?


……そんなままじゃ、変われない。


そして、


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