コトノハの園で


「……えっ、卒論……?」


推測よりも年齢が上だったことに多少驚く。


いつも、とても余裕ある時間の過ごし方をする様子からは、この時期の、卒業を迎えようとする大学生の焦りが微塵も感じられなかったからだ。


僕の感想は、どうやら、深町さんには違う意味で捉えられてしまったようで。


「……確かにチビですけど、でも、本当です」


深町さんは学生証を取り出し、印籠のように掲げる。――まるでいつかの僕みたいだ。


「森野さんが、教授のお手伝いに通われている大学の学生です」


いえ。確かに、見たところ、深町さんは身長が低い方ですが、そういう意味では……。


弁解しようとも考えたけれど、上手く口が動いてくれなかったことと、墓穴を掘ってしまいそうな予感もあり、一言だけ。


「……申し訳ありません」


情けない……。


「いえいえ」


許される声に怒気はなく、笑っているようにも感じられた。けれど、真意までは掴めない。


――ならば、だ。


ひとまずは額面通りに受け取っておこう。


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