コトノハの園で


今ここで、頷いてくれればいいだけ。


「私、就職先がチョコレートを販売する会社なんです。明日から暫くそこで毎日バイトです――ええ。それは本当にめまぐるしい日々になるでしょう。毎年行ってるんですけど、修羅と化した女性がわんさか来店するんですよ。森野さんには地獄です。――、そのチョコレート、会社からのものなんですけど、これから大量に扱うであろうそれを食べるのは億劫なので、森野さんに差し上げます」


就職先のチョコレートはとても美味しくて、億劫になることは、私はおそらくないと思う。


長い時間を費やし、悩んで、やっと決めたチョコレート。


どうかどうか、悪しき風習だと笑い飛ばして。


なら、渡さなければいいじゃないか――冷たく凍える空から、神様の声が聞こえた気がした。


……そんなの、沢山たくさん考えたわよ。馬鹿なことばっかりよ、私は……。


「――ありがとうございます。では当分ここには来られないですね」


「っ、そうですね。今年度はバイトお休みさせてもらうことも多かったので、一番のこの時期は頑張らないといけません」


「桜ちゃんが寂しがるでしょうね、きっと」


でも、森野さんはほっとするでしょう?


「寂しがってくれますか?」


「おそらく、なるのではと」


「じゃあ――」


言ってしまってから……


「――寂しくても、我慢してくださいね」


……、とても後悔した。







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