コトノハの園で
「ワアッ!!」
感嘆の声。
「菜々ちゃんキレイだぁ。おしとやかだぁ。桜も絶対袴着るんだもんねっ! あっ、カメラカメラッ。写真撮ろ~っ」
きっと、今日の私の袴姿を見て、こんなに羨望の眼差しを向けてくれるのは、桜ちゃんがオンリーでナンバーワンだ。
暫く見下ろされたあと、着付けが乱れないよう気遣われながら、まるでダンスを踊るみたいに、私は桜ちゃんとくるくるステップを踏む。
「ちょ、ちょっと桜ちゃんっ」
「ヘヘッ。まわると菜々ちゃんはお花みたいに可愛いねっ」
こんな可愛い台詞。言われたら、されるがままになってしまう。
待ち合わせをしてた図書館の駐輪場で、少しだけ抜け出してきた香田さんも含めて一緒に写真を撮った。
「今日の化粧は気合入ってるね、お姉ちゃん。写真撮るから?」
「当ったり前でしょう。桜ももうすぐその制服終わりだし、菜々ちゃんはこんなに可愛いし。目立てないじゃない」
「香田さんは素で美人なんだからいいんですっ。加工を施さないといけない私はどうなるんですか」
「そんな大間違いを菜々ちゃんに吹き込む奴等がいたらボコボコにしてやるから連れてきなさいね~」
「……お姉ちゃん。それは職場では内緒の性格なんじゃないの?」
香田さんと、もうすぐ中学を卒業する桜ちゃん、袴姿の私で、すぐに何十枚というデータは蓄積されていった。