未来ーサキーの見えない明日までも。
「どういう事か説明して下さい、里田先生」


 奏多は、震えて制服や下着を直す事が出来ない祥花に学ランを着せながら里田と対峙する。

 里田は苦虫を噛んだような顔をした。


「君には関係ない」

「俺は祥花の弟です。関係ない訳がありません」

「…………」

「理由を話して下さい。それくらい良いでしょう? 別に学校を辞めろと言っている訳じゃないんだ」


 冷めた口調の奏多に、里田は一瞬怯んだ。目が、侮蔑以上の怒りを秘めている。


 観念したように里田はぽつりと言った。


「好きだったんだ。祥花の事が」


 祥花が奏多の後ろで大きく揺れる。


「最初は見てるだけで充分だった。でもいつの間にか、どうしようもないくらい愛していた」

「だからって手を出しても良いのか? まず想いを伝えるのが先だろ!」

「好きだと言ってどうしろと言うんだ! 引かれるに決まってるだろうっ」


 里田は泣きそうな声で訴える。祥花の目から新たな涙が零れ落ちた。


(先生……っ)


 こんな形で好きだ、などの言葉を聞きたくはなかった。祥花は卒業式の日に想いを伝えようと決めていたのにと顔を歪める。


「脅して繋ぎ止める事しか出来なかった」


 つぅっと里田の頬を涙が伝った。祥花も奏多も驚いて目を見開く。


「それでも、アンタは最低な事をしたんだ」

「分かっている」


 掠れた声で頷き、里田は悔しげに顔を歪めた。


 祥花はそんな里田を見ていられず、里田に近づいた。奏多は祥花を引き止めようと手を掴むが、祥花はの手は奏多の手をすり抜けた。


 祥花は里田を見上げ、そっと手を伸ばした。それから里田の涙を拭う。

 里田は驚いたように祥花を見下ろした。


「先生。私にフルートを……フルートの楽しさを教えてくれたのは、先生でした」


 自らも涙を流しながら、それを拭おうとはしない。まっすぐに里田を見つめる。


「ずっと、好きでした。里田先生の事が好きでした」

「祥花!」


 奏多が祥花の言葉を遮る。そんな事を言ってしまえば、里田はまた何を仕出かすか分からない。
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