星に願いを


職員室の前まで行って、一度深呼吸をしてからノックをした。


「三年の鈴木です」と言って、私は、職員室に入った。


ほんの少し声を張って、どこにいるかわからない先生に
「あの、望月先生」
と言うと、コピー機の前の人影が、
「ん?」と首を傾げた。
望月先生だ。

何、今の仕草。
私より女子力高いんじゃないだろうか。かわいい系。





「あの、さっき授業で使った資料。全部持ってきました」


「あー、はいはい」そう言って、
書類をトントン、とそろえて、コピー機の電源を切って先生が私の元にやってくるまで、職員室特有のコーヒーの香りを胸いっぱいに吸い込んでいた。




「で?なんだっけ?」
私の前に来て、ぼけーっと言った先生は、
お世辞にも18歳のわりに背が高いとは言えない私をかるーく見下ろしている程度だから、特別大きい人とは言えないだろう。


でも、背が高く見えるのは、どうしてだろう。




「資料、持ってきました」


「なんで君が?」



尋ねながら、腕をまくって、首を触る。

手首の骨が目立つ。



ああ、そうか。
先生は、細いから。
華奢だから、背が高く、見えるんだ。



「日直なので」


「あー、うん。ごくろーさま」


本当に思ってるの?と疑いたくなる声のトーンで言って私からひょいっと資料の束をとりあげて自分の机に置く。




「悪いね、か弱い女の子に重労働させて」


飄々と言う。


「…いえ」









「えーっと、君は?」


「は?」



















「君、名前は?」
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