僕と、君と、鉄屑と。

(3)

 この部屋は冷え切っていて、すごく寒い。私はほとんど一日中、この寝室で過ごしている。リビングもキッチンも、他の部屋も使わない。私は一人で大きなベッドで目を覚まし、適当な物をベッドで食べて、一人でベッドで眠る。テレビも、パソコンも、スマホも、何も見ない。これからも、私はただ、起きて、食べて、寝て、時々着飾って、つかの間の夫との時間を過ごす。一言も、誰とも交わさない日もある。
 私は多分、こうやって、時間を過ごして、きっと、そのうち、あの人のところにいく。今に始まった生活じゃない。あの人が消えてしまってから、私は、その時のために、ただ、時間をすごしている。前の小さな部屋でも、私は、毎晩、どこかの男の人とバカ騒ぎをして、お酒を飲んで、時々ベッドを共にして、明日の朝は、もう目が覚めませんように、と祈って、眠りについた。
 でも、毎朝、目が覚める。たった一人の朝を、毎日、迎えている。
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