今宵、月が愛でる物語
「平気。帰ったらちゃんと冬汰にあっためてもらう。」

僕の方を向いてさも当然とばかりにそう言いながら満面の笑顔を向ける彼女は時々いじめたくなるくらいあまりにもあっけらかんとしていて。

付き合ってもう2年経ち、半年前から同棲しているけれどその無邪気さは一向に変わることはなかった。

「……そんなこと言って。

僕が拒否したらどうするの?」

ちょっと意地悪っぽい視線を向けてみる。

けれど…

「…拒否?冬汰が!?

ふふっ。冬汰は絶対拒否しないよ。」

ほんのカケラも疑わないその自信を浮かべた得意げな顔で、いともあっさりとかわされてしまった。

「………なんで?」

「だって…

冬汰は私のこと大好きだもん。それにいつでも抱きたいと思ってるもん。

ちゃんとわかってるよ。」

「………………」

何も言い返せなかった。


だって………その通りだったから。



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