ハナミツ
〈綾瀬目線〉


「直」

「母さん。なに?」

「なに考えてるのかなって思って、直のここがきゅーってなってたから」

自分の眉間を指して母さんは笑った。
久しぶりに休みが取れ実家に帰ってきたが、仕事関連の台本を見ていた。

「…」

台本の文字を見ていても見れない。集中出来てない。


「……考え事してた。仕事じゃないこと。」

「そう」


今日蓮花が立花くんと話す。その事についてはちゃんと連絡も来たし場所だって分かってる。

なのに俺の足はそこには行こうとはしなかった。



あの日立花くんと話した事を思い出した。


***
「見たんです。2人が駅で新幹線から降りてくるところ。」

「それで。」



「2人は付き合ってるんですよね。」

「そうですよ。」
「案外サラッと教えて下さるんですね。」

「隠しても後々めんどくさいと思って。確信がないと言葉にはしないですから。特に彼女の身内には信頼されたいですし・・・」

強い目だと思った。
似た目をしていた奴を知ってる、タツだ。

同じ目をして俺に突っかかってきては何回か喧嘩した。それは今も変わらないけど、前より穏やかになった気がする。

彼の目はその時の奴の目によく似てる。
自分の意思を貫こうとする目。





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