この恋を叶えてはいけない
「あ、たし……」
「うん」
「あたし……
好きな人が……いるんです……」
「……うん…」
「だけど……
絶対に叶わない相手なんですっ……」
初めて、この言葉を他人に打ち明けた。
言葉にして溢れてくるのは、
自ら現実を突きつけた悲しさ。
そう……。
あたしと駿は、決して両想いになってはいけない二人。
だからこの道を選んだ。
戸村さんは何も言わなくて、
ただ静寂が二人を包む。
だけどあたしを抱きしめる腕の力が、少しだけ強まって……
「なら……
俺を利用すればええやん」
そんな誘惑の声を漏らした。
「何…言って……」
「俺のこと、利用したらええ。
寂しさを埋めるための相手にしたらええ。
二番目でも……ええから……」
耳元で聞こえる戸村さんの声は、こっちが苦しくなるほど切なげで……。
「俺はそれでもかまへんから……」
見上げたその瞳は、愛しさと切なさが入り混じっていた。