この恋を叶えてはいけない
 
手のひらをぎゅっと握りながら、俯いたまま切り出す。

駿は何も答えなくて、しばらくの沈黙が流れる。

だけどその沈黙はすぐに破られ……



「……そっか…」



と、駿の声が漏れた。

ゆっくりと顔を上げると、そこには微笑んだ駿がいて……



「よかったな」

「……」



あたしの頭を撫で、励ましの言葉をくれた。


「相手が戸村くんだったら安心だし」
「……うん…」


駿と陵は、お隣さんだけあって、何度も面識はあった。
そのたびに、陵は駿に積極的に話しかけていて、あたしの唯一の肉親であることからよくしてくれていた。


だから駿は駿で、陵のことを信頼してくれているんだと思う。
 
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