この恋を叶えてはいけない
 
プロポーズをされたときにも答えた言葉。


あたしには忘れられない人がいると……。


それでも受け入れてくれる陵だったけど、
多分陵は不安だったんだと思う。


いつかあたしが、
やっぱり忘れられないといって、陵の結婚を断るかもしれないということに……。



「あたしはあの日から、
 もう迷ったりなんかしてないよ」



少しだけ嘘をついた。


一度だけ迷った日があった。

駿に結婚をすると報告した日……。
もしもあの時、駿に引き留められたら……もしかしたらあたしは、引き戻されていたかもしれない。


でもそれは
あの時、あの場所だけで……。




「ずっと……
 陵と結婚する日を夢見てた」


「……唯…」




あたしの言葉に、陵は微笑んだ。
 
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