この恋を叶えてはいけない
「すみませーん。
I町店から来ました早見です」
「あ、早見さんね。待ってたよ!」
店内は本当に忙しそうで、多分、この店の店長ともう一人しかいない。
そろそろ夕方になり、お店も混み合う時間。
あたしはベストなタイミングできたようだ。
「手順とかはそっちの店舗とほとんど変わらないから。
調理場は人がいるんだけど、店内の子が欠勤しちゃってさ。
レジ打ちのほうをお願い」
「わかりました」
一通り、簡単な説明を受けて、あたしも店内のショーケースの前に立った。
多少違和感があるものの、同じチェーン店。
すぐにその場に慣れた。
確かにこの店は、駿のいる町でもあるけど、365日この広い世界の中、こんな小さなお店で出くわすわけない。
その思いとともに、店内が混み合ってきたことから、あたしの頭の中から、駿に会ってしまうかもしれないという不安は消えて行った。