*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「うん。風邪ひいたって」


風邪かぁ。

夏風邪って長引くんだよね。

大丈夫かなぁ……シィ君。


そんなことを考えていたら、ケンちゃんと目が合った。

彼は何か言いたそうな表情でじっとわたしを見つめていた。


あ!

そか!


「ごめん、ごめん。お茶でいい?」


わたしはそう言って、あわてて準備室に入って行った。



お茶を持って戻ると、ケンちゃんはイスには座らず、壁際で床に体育座りをして顔を膝に埋めていた。


「はい。どうぞ。お疲れ様」


お茶の入った冷たいコップをケンちゃんの頬に当てる。

ケンちゃんは、暑さのせいで真っ赤になった顔をあげてニッコリ微笑む。


わたしも壁にもたれかかって、ケンちゃんの横に座った。



連日の部活で、顔も手も首も真っ黒に日焼けしている。

いつもツンツンに立てている前髪は垂れて、汗のしずくが滴っていた。

よく見ると、ほどよく筋肉がついた堅そうな腕には、日焼けした肌でもはっきりわかるぐらい太い血管が浮き出ている。

当たり前だけど、男の人なんだなぁ……なんて、しみじみ感心してしまう。


「何?」


わたしの視線に気付いたのか、ケンちゃんは顔をこちらに向けた。


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