*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「ちぃちゃん……!」


ユカリちゃんは泣き顔だった。

こんな時なのに、女優さんみたいにキレイな顔に一瞬見とれた。

抱き合う二人は、スクリーンの中にいるみたいに絵になっている気がしたから。


わたしは自転車に乗ると、急いでその場から逃げ出した。


なんでわたしが逃げなきゃならないんだろう……。

でも、そうするしかできなかった。


途中、一度だけ後ろを振り返った。

ひょっとしたら、追いかけて来てくれるんじゃないかって甘い期待を込めて。

その期待は、見事に打ち砕かれたけど。



日はすっかり暮れて、辺りは暗い闇に包まれていた。

住宅街の灯りだけが道路を照らして、今にも闇に飲み込まれそうになるわたしを導いてくれた。

その灯りさえも、視界の中でやがて滲んで……見えにくくなる。


涙をこぼしたくなくて、唇を噛み締めた。

行きと違ってペダルを漕ぐ足が重い。

家までの坂道が永遠に続くような気がした。





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