*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「正直迷っててん。めっちゃ軽そうやったし」


1年の頃から軽そうだったのかぁ……。

なんていうか……サトシ君て……。


「でも、つい口車に乗ってしまったというか……。まぁ顔も悪くないし」


ああ……なんかわかるなぁ。

サトシ君て、ほんと口が上手くて、人を自分のペースに巻き込んじゃうんだよね。


「あぁっ! でも、アイツと付き合ったんは、あたしの中で最大の汚点やわ!」


よっぽど嫌な思い出があるのか、頭を抱えて苦々しそうな顔をしている。


「付き合ったって言っても、1日だけやねんけどね」


「え? たった1日……?」


「うん。付き合うのオッケーしたその日に、家に連れて行かれてん」


「うん」


「まぁ……のこのこついて行ったあたしも悪いねんけど……。アイツ……付き合った初日やで」


うっ……。

まさか……。


「部屋入るなり、いきなり押し倒されてん」


やっぱり……。


「あたし初めてやねんで。そんなん、心の準備とかあるやん?」


そりゃそうだよね……。


「で、思いっきりひっぱたいて、家出てきた。それで終わり。追いかけてもこーへんし。謝らへんし。ほんとヤリたいだけやったんやなぁって思った」


サトシ君、それはないよ……。

目の前にいるエミコに同情してしまう。


「とにかく」


エミコはまっすぐにわたしの目を見つめて、忠告した。


「アイツには気つけた方がいいよ。ってゆか、はっきり言って、ちぃちゃんみたいな純な子とは合わへんと思う」

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