*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
明日から夏休みだという1学期最後の日。

終業式を終えたわたし達はすぐには帰らず、結局いつものように食堂に集まって昼食を食べていた。


わたしは目の前で繰り広げられているカナコちゃんとシィ君の会話に耳を傾けていた。


「『デートの待ち合わせ。待つのと待たす方、どっちがいい?』」

「待つ」


ああ……うん、なんとなくだけどそんな感じがする。


「『猫派? 犬派?』」

「猫」

へぇー……それは意外だな。

犬、飼ってるのに、猫の方が好きなんだぁ。


「『彼女と映画観るなら、恋愛物? それともアクション物?』」

「んー。コメディ」

「そんなん、無いって。どっちか選んで!」

「じゃ。アクション」


えー……そっかぁ。

わたしは恋愛物の方がいいなぁ。


「髪の毛はロング、ショート、どっちが好み?」

「ロング」


ロングって、どれぐらいの長さなのかな。


……なんて。

ふたりは今、カナコちゃんが持ってきた雑誌に載ってる、『恋愛チャート』なるものをやっている。

質問に答えていくと、最終的に好みの女の子が診断されるって仕組み。

質問しているのはカナコちゃん。

そして、答えているのは、もちろんシィ君だ。
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