俺様副社長に捕まりました。
そして里沙さんはドアの方へとベビーカーごと向きを変えた。
そして輝君を捜すように自分の左右を見たが輝君の姿が見えなかった。
「輝?」
名前を呼びながら輝くんを探していると

「ね~おじちゃん・・・・だれ?」
輝くんは安藤専務を見上げていた。
里沙さんが慌てて連れ戻そうとしたがそれを止めたのは拓海さんだった。
安藤専務はどう答えていいのか分からず複雑な気持ちで輝くんを見つめていた。
「ねーねー。おじちゃんはママのお友達なの?」
屈託のない笑顔で質問する輝くんを目の前にした安藤専務の表情に変化が起きていた。
里沙さんは何か言いたげだったが拓海さんが黙って見てろと言わんばかりに
首を横に振ったから不満そうにしていた。
すると
黙って見下ろしていた安藤専務が輝くんの視線に合わせるようにしゃがんだ。
そして・・・・
「おじちゃんは・・・・」
「うん」
「輝くんの・・・・・おじいちゃんだよ」
「おじいちゃん?僕のおじいちゃんなの?」
うんと頷くと輝くんは自分におじいちゃんがいたことが嬉しかったのか
興奮しながらその場でぴょんぴょんとジャンプした。
だが里沙さんには納得できない部分があった。
「この人は・・・おじいちゃんなんかじゃない輝?!帰るよ!」
輝くんの手をつかもうとすると輝くんが自分の腕を後ろに回し嫌だと首を横に振った。
「帰りたくない!おじいちゃんと遊びたいの!おじいちゃんとご飯を食べるの!」
「だから・・・この人は輝のおじいちゃんなんかじゃなないの!
今まで一度だって会いにきたこともなかったじゃない。どうせ・・・
子供がいたことだって知らなかったんでしょ。そんな人に今更おじいちゃんなんて
言って欲しくない・・・・迷惑よ!輝帰るわよ!」
「イヤだ!帰らないもん」
輝くんと里沙さんの帰る帰らないの押し問答が続いた。
だが・・・・安藤専務はそれを見ているしかなかった。
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