俺様副社長に捕まりました。
会場に一歩足を踏み入れた途端、周りの視線が一気に私たちに向けられた。
「視線が痛いんだけど」
ぼそっとつぶやく私の腕を水沢さんは反対の手で私の組んでいる腕をポンポンと叩くと
余裕の笑みを浮かべた。
「そのうちもっと視線を浴びるから今のうちに慣れておいた方がいいかも・・・」
「慣れたくないんですけど・・・」
ため息混じりに視線を逸らす私を見て水沢さんがフッと笑う。
すると前の方から女性たちが何やらヒソヒソ話している。
何を言っているのか全く聞こえないが目を輝かせているあたり
水沢さんの笑顔にはしゃいでいるのだと思った。
だって普段の水沢さんはいつも厳しい顔をしているんだもん。
前回のパーティーだって水沢さんが素で笑っているところなど一度もなかった。
それが普段見せない笑顔を見ればキャーキャー言いたくなるだろう・・・・
だけど本人はそれを何とも思ってないんだもん。
余裕のある人は凄い・・・・

「相変わらずファンが多いこと・・・・」
なんだか悔しくってちょっとイヤミを言えば
「おいおい・・・男性陣の注目を浴びてる人に言われたくないけどね」
「はぁ?」
思わず周りをぐるっと見渡した。
・・・・確かに男性の視線を何度か感じたがそれは水沢副社長と腕を組んでいる女は誰だ?
っていう単なる興味本位のものだと思っていた。
まさか私自身に興味があるなんてとても思えない。
「水沢さんが目立ちすぎるからですよ」
口を尖らせる私に水沢さんはじっと私を見つめ、そしてフッと笑った。

「・・・・・・・・・・はいはいそういうことにしておくよ。・・すみませんね、目立ちすぎて」
全然反省してない言い方にこれ以上言っても無駄だと思った。
だけど、なんだかほんの少しだけ緊張が和らいだ・・・・そんな気持ちだったが
それはすぐに打ち消された。
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