最後の恋にしたいから
目は泳いで表情が硬くなっている様子を見るだけでも、沙希さんがただの元カノではないことが分かる。

「実は昨夜、たまたま見ちゃったんです。名越課長の部屋に、沙希さんとの写真や手紙があって……。それに指輪も。だけど、それを彼は知りません。ただ、とても大事にとってあったんです。名越課長は今でも、沙希さんに未練があるんでしょうか?」

震える体を誤魔化す為に、体の横で握りこぶしを作る。

想いが通じ合ったと思ったら、元カノの存在がチラつくなんて不運過ぎる。

だけど、私に告白してくれた彼の気持ちに嘘はないと信じて、本当のことを聞いてみたかった。

それに、この動揺ぶりは二人をよく知っている証拠だ。

すると、安藤課長は目に涙を溜めて、手で口を覆ったのだった。

「安藤課長⁉︎ どうかされたんですか?」

あまりの態度の急変ぶりに、こちらは戸惑いを隠せない。

涙が込み上げるほど、一体何があるのだろう。

心配になりながら課長を見つめていると、赤くなった目を向けられた。

「ごめんね。ビックリしたよね。実は沙希は、去年の5月に亡くなっているの」
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