最後の恋にしたいから
そう言った課長は、そっと唇を重ねた。

ライトなキスだけれど、鼓動が速くなっていくのが分かる。

「実は一周忌に、沙希のご両親が遺品の整理をしてね。その時に、ようやく彼女のスマホを確認したらしいんだけど、そこでオレ宛の未送信メールを見つけられたんだ」

「未送信メール？」

小さく頷いた課長は、ゆっくりと話を続ける。

「日付は事故当日。おそらく、事故に遭う直前に送ろうとしたみたいなんだけど、それがエラーになっていたんだ。中身は、オレに対する謝罪と、これからも一緒に未来を見たいっていう内容」

「ケンカのことを謝ろうとしてたってこと？」

「そう。悪いのはオレも一緒だし、海外の夜に沙希を一人にしたのは完全に間違ってた。彼女の命を奪ったのはオレだと思っていたけど、沙希はオレと仲直りしたくて、でもそれが出来ないまま逝ってしまったんだよ」

課長の話を聞くうちに、涙が自然と溢れてくる。

同じ彼を想う女として、沙希さんの気持ちを想像すると、いたたまれなくなっていたのだ。
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