最後の恋にしたいから
「イヤ?」

課長は少しムッとした口調でそう聞いた。

どうして機嫌が悪くなるのだろう。

「イヤというか、上司と二人きりで出かけるなんて緊張するんで……」

ベソをかいたように答える。

そりゃ、そうでしょ?

そもそも課長は、休日を私と過ごしていいのだろうか。

「だから、オレたちは『上司と部下』じゃないんだよ。恋人同士と思えばいいんだよ」

じれったそうな口調に、私は半泣き状態だ。

「やっぱり無理ですよ……。課長を彼氏だなんて思えません」

きっと、課長なりに好意で提案してくれたんだろうけど、私には無理だ。

失恋したばかりな上、今まで恋愛対象として見てなかった人を、恋人に思えという方が難しい。

「そっか。奈々子の言う通りだな。ごめん。オレが強引過ぎた。じゃあ、改めて誘うよ。オレと週末を、一緒に過ごしてもらえませんか?」
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