最後の恋にしたいから
安藤課長は、営業部唯一の女性課長で、名越課長とは同期。

お互い、名前で呼び合うほど仲がいい。

今までは、さほど気にならなかったけど、今はなんとなく二人の距離感を嫌だと感じる自分がいる。

なにせ、安藤課長はかなりの美人だ。

170センチ近い身長と、肩甲骨辺りまである黒髪のストレートは、いつも後ろで束ねてある。

斜めに流した前髪が、『課長』という役職の割には、彼女を柔和に見せていた。

オリエンタルなルックスで、まるでモデルみたい。

「安藤課長、お疲れ様です」

名越課長と同じく、あまり絡みはないけれど、お互い顔見知りだ。

私は愛想を浮かべて挨拶をしたのだった。

「お疲れ様、古川さん。あれ? 二人とも変わったコーヒー入れてるのね」

私たちのカップに気付いた安藤課長は、見比べながらそう言った。

いけない、いけない。

名越課長と変に親しいと思われてはいけない。

まだ何も、進展していないのだから。
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