ぺピン
だけど、自分が京香に振られたことは間違いなかった。

「な、何で?」

思わず聞き返したのは、自分の中で認めたくないと言う部分があったからなのかも知れない。

京香に断られたと言う事実を受け止めたくないと言う、男のプライドがそうさせたんだと思う。

京香はわからないのかとでも言うように、小さく息を吐いた。

「好きな人がいますので」

京香が言った。

「好きな、人…?」

呟くように聞き返した恭汰だったが、京香の方はこれ以上話をしたくないと言うように掃除に集中し始めた。

初めて続いた会話に名残惜しさを感じながら、恭汰も掃除に集中し始めた。

(好きな人がいる…か。

そりゃ、当たり前のことだよね)

恭汰は心の中で呟くと、京香に気づかれないように息を吐いた。
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