東京片恋専科。
軽く触れるだけのキス。
それだけでも胸のあたりになんだかピリッとした刺激が走る。

一旦唇を離し、顔を上げる。彼女もうっすらと目を開けた。

「…。」

「…。」

まだ寝ぼけているのだろう。彼女は状況が飲み込めていないようで、俺の首に回している手をほどくこともなく、そのままの状態で目だけをぱちくりとさせた。

その顔がヤケにかわいく思えて。
自分でもよくわからないうちに、俺はもう一度唇を重ねた。


さっきよりも深く。

彼女もそれに応える。


《キスってこんなに気持ちよかったっけ…》


そんなことを考えながら。


唇を離すと、その合間にもれた彼女の吐息と、苦しそうな困ったような…でも色っぽい表情が俺を誘惑する。


「止まらなくなりそうだからその表情やめて」


なんとかわずかに残った理性でそう言う。


「エロい」


いや、エロいのは自分…


「…落ち着こう、俺もだけど」


ほとんど自分に言い聞かせるように話すうちに、少しだけ頭に冷静さが戻ってきた。
< 17 / 24 >

この作品をシェア

pagetop