小宮の隣・俺のモラル

濱村は、あのキスを覚えているはずもなく…。
俺は、毎日なにかの拷問に耐えているみたいだった。
この友達の関係を壊さないように、少しづつ築き上げて、隙あらば濱村の心の隙間に入り込もうと思っている。

理性とか欲望を全部押し殺しておかないと、濱村を襲いそうだった。

そんな鬱憤を晴らす為に、1人でバーに行った。

濱村に似てる人でいいから、触れたい。そんな思いで、酒を頼む。

「マティーニ下さい。」


店の中は、活気に溢れていて、皆酒を交わしながら楽しんでいる。


「はい。どうぞ。君、見ない顔だね。」

バーのマスターに声を掛けられる。

「初めて来ました。」

「ここのお店のこと知ってて来たんだよね?」

「もちろん。誰か…いないかなぁー?って。」

自分で言ってて可笑しくなる。

「君は、顔綺麗だから皆気になっちゃうんじゃないかな?」

「嬉しいような、そうでないような…複雑ですね…。」

「きっと、楽しめると思うよ。」

「ありがとうございます。」

周りを見回しても、濱村に似た奴はいない。溜め息が漏れてしまう。

「……はぁ。」


ートントンー


左肩を叩かれた。

「隣いいかな?」

「はい…。」

俺に声を掛けてきたのは、スーツに身を包んだ、甘くて刺激的な香水をつけた男だった。
< 38 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop