小宮の隣・俺のモラル

「んじゃー…由希!一週間お疲れ!」

「小宮もお疲れ!」

乾いた身体に流れ込むアルコール。
一気に疲れが吹っ飛んでいくような感覚。

「あーー。うまいっ!!」

会社の近くにある居酒屋に来ている。
いつも小宮と飲みに来る時はここだ。
仕事の話から、女子社員の話になっていく。

「つーか。由希さー…お昼に俺と話してた子と知り合いなの?」

内心触れて欲しくない話だった。

「まーな。知り合いだ。小宮こそ、あの子と何話してたんだよ。」

「恋愛相談かなぁー。」

は?恋愛?!
彼女が恋愛相談って…。しかも、小宮に?!

「ふーん。やっぱり、モテるんだな。」

複雑な気持ちを隠し、平然を装う。

「なにー?由希だってモテるだろー?可愛い顔してるんだから。」

ニコニコ笑って話す小宮。

「お前…男に可愛い言うな。」

可愛いなんて言われたことは、今まで一度もなかった俺は、すごく驚いている。

「別にいいじゃん!本当のことだし。けど、由希は俺に無いものもってる。」

真っ直ぐ小宮に見られると、なんだか目を反らしたくなった。

「小宮だって、俺に無いものもってるだろ。その綺麗な顔とか?」

「は?!綺麗とかなんだよ!男に言うな!」

少し照れてる様にも見える横顔。

「ははっ!悪い!悪い!そーいや、小宮休みの日は何してんだ?」

「んー。家にいるか、出掛けてるかな。明日休みだけど、由希予定あるのか?」

明日は、彼女と2人で出掛ける予定だ。
正直に話していいだろう。
小宮は、驚きもしない様子で話を聞いている。

「んじゃ、今日は早く帰った方がいいよなぁ…。」

むしろ、早く帰宅する事を進めてくる。

「でも、せっかく小宮に誘ってもらったんだから、最後まで付き合う!」

「はー?何でだよ。そんなこと言うともう一軒行くぞ?」



そんなこんなで、もう三件目だ。
もちろん終電もない。
2人とも大分酒が回っている。
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