楓の樹の下で
ここにいる皆はオレみたいな奴ばかりではない。
華ちゃんは親が離婚して母親がアルコール依存性となり、入退院を繰り返し面倒が見れないと預けた。
朝陽と夕陽の双子はもともと父親がいてなくて、母親は一人で双子を産んでまもなく死んでしまった。
だから、双子は親を知らない。
茜と瞬は両親が離婚後どちらも新しい家族ができたのをきっかけに育児を放棄した。居場所がなくなり、小さな瞬を抱いて夜、出歩いている所を度々保護されるようになり、話し合いの結果、向日葵に来ることになったのだ。
「簡単にいえば邪魔になって捨てられちゃったの」と、茜は寂しそうな目をしながら笑って言った。
大毅は二歳の時から、血の繋がらない父親から日常的に虐待を受けていた。ある日お湯をかけられ泣き叫ぶ声を聞いた近所の人が通報し救助された。その時の火傷があの首の痕だ。
父親も母親も捕まり今は刑務所にいてるらしい。
お風呂の時その痕は背中まであり、びっくりして釘付けとなってしまったオレに、大毅は
「痛そうに見えるけど、今はもう痛くないから触っても大丈夫だよ!」
と、笑って見せた。
みんな心に傷があることをボクは知ったんだ。
だから、オレにも優しくしてくれるのだと。


ある晩、夢を見た。
部屋の隅で男の子が震えてる。
オレに似ているけど、どこかオレじゃない。
どうかしたの?と、声をかける。
その子はゆっくり顔を上げる。
でも顔が真っ暗で誰だかわからない。
すごい恐怖がまとわりつく。
「いつまで、そこにいるの?」
と、問いかけてきた。
「そこって、なに?」
「ボクのだから、返して。」
そう言うと手を伸ばし、オレの手を掴んだ。
グイッと引き寄せられ、目の前に見えなかった顔が近ずく。


オレと瓜二つの顔だった。

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