楓の樹の下で
俺は家を出て青木さんの車に戻った。

「どうや?日向くんは、いたか?」
「いえ、それより青木さん、以前言ってた写真の場所ってどこですか?」
「写真…あぁどっかの木の前で撮ってやつか?」
「そう、そうです。その写真がなくなっているんです、だからきっとそこに日向はいるんです!」
「あの後すぐに日向くんの身元がわかったから、そっちの調査は終わらしたんや。ちょっと待って。」
そう言って青木さんは木田さんに電話をした。
「鏑木さん…日向くんの捜索、署に言いますがいいですか?」
こうなったら、優先すべきは日向の未来の前に、命だ。
「お願いします。」
青木さんは木田さんに写真と日向の捜索を開始するようにと伝えた。
とりあえず写真の風景のような場所を回って行く。
「鏑木さん、先程の答え教えてもらいませんか?今の日向くんやないって、どうゆう事なんやろ?」
「これは俺の考えです。日向は解離性同一性障害じゃないかと…」
青木さんが車を止めた。
「解離性…なんです、その解離性なんとかってやつは?」
「簡単にいえば二重人格、もしくは多重人格者です。日向のように虐待や、辛く耐え難い経験をしたショックなどが原因で自己防衛や寂しさから他の人格を創り出すんです。そうして、現実から逃げ道を作るんです。そうじゃないと壊れてしまいますから…多分日向もそうやって別の人格を創り出したと思います。自分を守るために…。」
「なんでそう思ったんや?」
「病院で会った時の日向と向日葵に来た当初の日向は一緒です。記憶が戻ってからの日向は別人です。嫌なことは創られた人格が請け負ってたはずです。」
「ほな、その創られた人格が母親殺ったってことか?」
「多分。病院などの日向が主の人格。記憶を戻したのは、創られた人格だと思います。」
「鏑木さんの言うことがホンマやったら今の日向くんは危険やな!」
そうだ。だから俺は焦ってるんだ。
青木さんの電話が鳴った。

「どや、なんかわかったか?」
『それが、駅の交番からの連絡で◯△公園を聞いて来た子供がいたそうなんです。』
「それどこや?」
電話を切ると青木さんは車を発進させた。


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