叶う。 Chapter1
吐き気がする。
だけれど、もうどうしようもない。
こんな道を通った自分自身が悪いことは百も承知だけれど、誰か一人くらい助けてくれたっていいじゃないか。
男に半ば強引に引きずられるように、嫌々と歩く。
何をされるかなんて、相手の目を見れば分かる。
欲に塗れたその目を何度も見てきたのだから。
男の向かう場所は、間違いなくホテル街の方向だった。
もう少しで自宅が見えてくるはず。
こんなに近いのに、なぜかすごく遠く感じる。
男は話しかけても応えない私を、何とも思っていないようだった。
鼻歌混じりにご機嫌な様子だ。
私は瞳から、色が消えるのが分かった。
見たくない物を見る時、私の瞳は色を失う。
それは見えなくなるわけじゃなくって、世界がモノクロなる、そんな感じ。
病院の先生曰く、それは普通の人には分からない感覚らしいけれど、私にとってはそれが普通の事だった。
そう、幼かったあの頃から治らない。