オレンジロード~商店街恋愛録~
思えば、レイジに対しての感情は、ただの憧れだった気がする。

レイジを好きでいることで、それだけをこの商店街にいる理由にしていたのだ。


でも、今、明子の手を引いてくれているのは、昔よりずいぶんとたくましくなった、幼馴染。



「健介の手がこんなにおっきくなってたなんて、知らなかったよ」

「ん? 何? 何か言ったか?」


足を止めて振り向く健介に、明子は、



「別に。じゃがいも似のやつに『ブス』って言われたくないって言ったの」

「はぁ?」


眉根を寄せた健介。

明子はそれを見て、腹を抱えて笑った。


健介は口を尖らせ、



「ほんとムカつく」


と、ぼそりと言った。



気付こうとすれば、そこにはたくさんの素敵なものがあった。

きっとここには、もっとそういうものが溢れているんだとも思う。


それを健介に教えてもらいながら過ごすのも、悪くないんじゃないか。




オレンジに染まる商店街をふたりで歩きながら、明子は、でもまずは健介の気持ちに気付いてあげるところから始めようと思った。











END

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