オレンジロード~商店街恋愛録~
ほとんど勢い任せだった。

「えっ」と驚いた顔をする雪菜を見て、俺は何を言っているんだろうと焦ったハルは、



「あ、いや、深い意味はないんだけど。っていうか、今、何かすごく言いたくなっただけで、だからどうしたいってことはないんだけど」


もごもごと言う。

雪菜はそんなハルを見て、おかしそうに笑った。



「ありがとう、ハルくん。私もハルくんのこと好きよ。でもそれは、友達としてって意味で」

「うん」

「嬉しいけど、そういうのは、ごめんなさい」


どこか誤魔化すように言った告白さえ、雪菜は真摯に受け止め、ちゃんと返事をしてくれた。

やっぱりいい子だなと思う。



「俺の方こそ、いきなりごめんな。あんまり気にしないで。忘れてくれていいから」

「うーん。でも、私は人の好意を忘れちゃえる人にはなれないなぁ。努力はしてみるけど」


雪菜らしい。

完敗のハルは肩をすくめた。


雪菜はそんなハルの目を真っ直ぐに見て、



「私ね、大切な人がいるの。その人と、これからもずっと、一緒に生きていきたいと思ってる」


優しさの中にも強さがあるその瞳。



「そっか。わかったよ」


うなづいたハル。

雪菜はほほ笑み、



「ハルくんは、ずっと友達。ずっとずっと、私の大切な友達。それでもいいかな」


俺が俺で、雪菜ちゃんが雪菜ちゃんなら、それでいい。

ハルが「十分さ」と返したら、雪菜は西日でオレンジに染まった笑顔を向けてくれた。

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