結婚してください
「そんなに似ているのか?」
亜紀は何も言わずにリビングのソファーに腰かけた。
無意識なのだろうがいつも亜紀が座る定位置だ。
座り心地が一番気に入っているのだろう。
「ここから眺める景色がとても好きだわ。
それに、この景色どこかで見たと思うの。
でも、思い出せなくて。」
「君はそこから外を眺めるのが好きなんだと思うよ。
素晴らしい景色だから。」
きっと亜紀は記憶が断片的に思い出されているのだろう。
それでもここで過ごした記憶はないのだろうか?
「亜紀、君が住んでいた古いアパートというのは何時の頃の話なんだい?」
「アパート? 私が高校卒業して大学へ入った時に暮らしていた所よ。」
卒業した記憶はある。ということは俺たちの婚姻についても分かっている?
「そのアパートにはいつまでいたんだい?
それに、その後はどうしたのか覚えているかい?」
亜紀は首を左右に振った。
けれど、どこまで覚えているのか、どこまで記憶を解放しているのかまだハッキリとしない。
「大学1年生の時のサークルを覚えている?
プラネタリウムを覚えているかい?」
「サークル? 私はサークルに入っていたの?
それって何のサークルなの?」
知らないのか?
そこからの記憶がない?