イケメン同期に素顔を見抜かれました

「もしもし」

「有村? 今大丈夫?」

芽衣の電話の向こうからは、何やらにぎやかな声が聞こえてくる。

「ずいぶん楽しそうだな、芽衣んとこ」

「あー、うちだけじゃなくて、慎くんのとこも一緒だから」

慎くん、とは芽衣の姉、雛子の夫の名前だ。

付き合って1年にもなる自分でさえ、「会社で呼んじゃったら困るし」という理由だけで未だ名前で呼んでもらえないのに、なぜに義兄に対しては『慎くん』なんだ。

そんな櫂の気持ちを知る由もなく、芽衣は話を続ける。

「あのさ、明日って時間ある?」

「うん、大丈夫だけど。どうした?」

「実はね、慎くんが有村に会いたいって言ってて」




芽衣の両親には、ちょっと前にデート中に遭遇して、挨拶をしていた。

母親は嬉しそうにニコニコしていて、父親は少しだけ拗ねたような表情をしていたが、悪い印象は持たれなかったようで、時々芽衣の家にお邪魔してご飯を食べる仲にはなっている。

雛子に関しては、芽衣と付き合えるようになったキッカケをくれた、櫂の恩人のような人物で。

すっかり自分のお姉さんのように慕っている。

ともなれば、崎坂家の家族でまだ交流をしていないのは、『慎くん』だけとなり。

「慎くん、『俺は芽衣ちゃんのお兄ちゃんなんだから、会って当然だ!』って騒がしくて。有村もヒマじゃないからって言ってはいるんだけど」

「いや、大丈夫。明日でいいんだよな?」

「無理はしなくていいんだよ」

「無理してない。行く」

スマホを持っていない反対の手の拳を握りしめる。

芽衣の事を本当の妹のように大事に思っている、と話に聞く慎くんとやらに、しっかり会ってやろうじゃないか!




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