初恋の君は俺を忘れてしまいました。

すれ違い

Said kou


―パタンー


玄関からドアの閉めた音が聞こえる。


沙菜のやつ、このことか。


俺たち二人は、二人でいることに慣れていない。


一度も二人になったことはない。


俺が避けていたこともある。


それ以上に美羽が俺たちに気を使ってくれていた。


二人の間に、沈黙が流れる中、この人は小声でいった。


「洗い物しなきゃ」


「・・・いいよ。俺がやる」


「ご飯作ってくれたんだから、片づけくらいするわ」


そんなことを二人で言い合っていたら、なんだかばかばかしくなってきて、二人して噴出し

た。


こんな風に二人で笑うことだってできたんだ。


俺がしようとしなかっただけだった。
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