不機嫌な君
「おい、島谷」
「・・・へ?」

変な返事に、金崎部長は怪訝な顔をする。

「全くお前は!またやり直せ!」
そう言って書類を私に突きつけた。

・・・さっきの事なんてまるでなかったようだ。
・・・考えてる事がバカらしくなっていた。

「金崎部長」
「・・・なんだ?」
不機嫌な顔で私を見上げた。

「…私のドキドキを返してください」
「・・・は??」
意味不明な反論に、金崎部長は眉間にしわを寄せた。

私は何をドキドキしていたのよ?
あんなのただ私を落ち着かせる為であってそこに恋愛感情なんてない。

…恋愛感情?
そんなモノ、私達には一生発生しない事柄だ。

私はズカズカト自分のデスクに戻ると、椅子に勢いよく座った。

「・・・何怒ってるの、ひとみちゃん?」
不思議そうな顔で私を見る葉月さん。

「何でもありません!」
イライラしながらそう答え、私は、訂正作業に勤しんだ。

あ~・・・早く彼氏作らなきゃ。
彼氏がいないから、変な事を考えるのよ。


「・・・そうだ!葉月さん!」
「な、何?」
作業途中、突然名前を呼ばれた葉月さんは目を丸くする。

「男紹介してください」
「・・・何を藪から棒に。…しかも男って、なんか生々しいわよ」
そう言って若干引き気味の葉月さん。

「私だって恋がしたいんです」
その勢いに、葉月さんは渋々頷く事になった。
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