不機嫌な君
驚き振り返る。
「…⁈」
相手を見て、更に驚いて声も出なかった。

…そこには、私の手を握って立つ、不機嫌な金崎部長がいた。
一瞬私を睨み、私は萎縮する。

でもすぐにその視線は、悠斗さんに向いた。

「…また君か」
不機嫌な顔のまま、金崎部長は言う。

「…貴方こそなんなんですか?今デート中だって事、見たらわかりますよね?」
悠斗さんも、負けじと言い返す。

「…これが、デート?」
そう言って金崎部長は鼻で笑う。
それに、いつも優しい悠斗さんも、流石にカチンときたのか、怒りを露わにする。

「何が可笑しいんですか?」
「…女にこんな困った顔させるデートなんて、デートとは言わない」

「…」
金崎部長の言葉に何も言い返せない悠斗さんは、黙って金崎部長を睨んだ。

「…帰るぞ、島谷」
金崎部長は私の手を引っ張り、歩き始める。驚きっぱなしの私はされるがまま。

「もう、島谷に近づくな」
そう捨て台詞を吐き、金崎部長は私をその場から連れ去った。
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