不機嫌な君
私は必死に気づかないフリをして、1日をやり過ごす。

今日は定時に仕事を終わらせた。…オフィス内に、金崎部長の姿はない。

それをいいことに、私は早足でオフィスを出て、エレベーターに乗り、一階に下りた。

…、うちの会社のエレベーターは、ロビーの死角にある。だからなんだろうか?

私の視界に抱き合う男女。…どうやら女性の方は、泣いているのか、肩を震わせていた。

私はそれを見ないように通り過ぎようとしたが、思わず足を止めてしまった。

もう、最悪だ。
「…島谷」
その声は、金崎部長…そして、その相手の女性は、優姫だった。

これは、悪夢でしかない。
私は、その場を駆け出していた。

…誰かの足音が、追いかけてくる。
私はそれに捕まらないように、必死に走った。

…。息が上がる。

「…捕まえたぞ」
「…」
私はその言葉に何も答えられなかった。
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