不機嫌な君
「…そんなに俺の事が嫌いか?」
「・・・です」

「・・・何?」
「嫌いです」

そう言ってキッと睨んだ。…すると、金崎部長はフッと笑う。・・・何で笑うの?私はその笑顔の意味が理解できず、困惑する。

「好きだって、顔に書いてあるぞ」
「なっ?!」

目を見開いた私を、金崎部長は抱き寄せ、ギュッと抱きしめられてしまった。…優姫を抱きしめたその腕で、私を抱きしめないで。

泣きながら、抵抗する。・・・でも、金崎部長は、私を放さない。

「なんで・・・」
何で、放してくれないの?

「悪かった」
「・・・・」

金崎部長の言葉に、抵抗していたからだが、ピタリとやんだ。

「優姫も…社長も、・・・ひとみを苦しめた」
「?!」

・・・何で、その事を知ってるの?私は、泣き顔のまま、金崎部長を見上げた。

「俺には、ひとみが必要だ。…俺から離れたひとみが、どれだけ俺にとって大事な存在なのか、思い知った」
「…部長」

「優姫にも、社長にも、俺からひとみを取り上げるなら、この会社は継がないと言ってきた」
「そ、そんな?!ダメです!…私なんかの為に…大事な未来を潰さないで」

そう言いながら、金崎部長の胸を叩く。
・・・でも、その手はすぐに優しく掴まれた。

「社長になる事が、俺の未来じゃない」
「・・・え?」

「俺の未来は、・・・ひとみ、君と、幸せになる事だけだ」
その言葉に、一気に涙が溢れる。

「それとも、俺の肩書に惚れたか?」
その言葉に、何度も首を振った。・・・そんな事で、金崎部長を好きになったんじゃない。
< 97 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop