インナーチルドレン(かわいい金魚番外編)
いただきます、と手を合わせて、おいしそうにオムレツを食べていた俊介が、純を見る。

「なに?」
「そりゃこっちのセリフだ。どうした?食欲ないのか?」

医者という職業柄か、ときどき、このおせっかいなセンセイは、純の身体を妙に気遣う時がある。

「そんなことないよ。……あんたって、すげえな、って思ってさ」
「なんだそりゃ」

自分の気持ちに正直に生きる。
そんな困難なことをやってのけている当人は、全く自覚がないらしい。
自分とは違う人種なのだと、純は、つくづくと思う。

それでも。
少しでも、俊介のように生きてみたい、と、思う。
そう思えるようになった自分を幸せだと、おもう。

「な、今日あったこと、話してくれよ。どんないいことがあったんだよ」
「べつに、いいじゃんか、たいしたことじゃねぇし」
「俺が聞きたいんだって」

ドングリみたいな目をキラキラさせて、俊介が純を見つめている。

この目に弱いのは、俺も、こいつも一緒なんだ。

純は、男の子と目を見交わしてから、観念して、どうやって今日の出来事を言葉にしようかと、考えた。


終わり
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