ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「俺が高校卒業して以来だから、もう10年以上だよな」




本当はそのあとに一度、同窓会で顔を合わせたことがあったけど、何も言わずに微笑んだまま曖昧に頷いた。




「ほんと、懐かしいな」




加藤さんが私の前に立つ。



あいかわらず、背が高くて細身で、顔も整っていて、見た目がよかった。




「ええ、懐かしいですね」



「智恵、あんまり変わってないな。

すごく若く見える」



「そうですかね………」




そのとき加藤さんが、ふと朝比奈先生に気づいたように目を向ける。




「あ、そちらは、今の彼氏?」




『今の彼氏』という言葉に、先生が眉を上げた。



そうとう鈍感で言葉の使い方に無関心でなければ、この言い方を聞けば加藤さんが私の昔の恋人だと気づくだろう。



むしろ、気づくようにこんな言い方をしたんだろうか、と私は加藤さんの顔色を窺ったけど、

見事に作られたその笑顔からは、どんな考えも読み取れなかった。





< 209 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop