ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「………なんですか?」



「いや、幸せだなあと思って」



「…………」




先生が大きな伸びをして、窓の外に目を向ける。


私もつられたように視線を移した。




薄いレースのカーテンを透かして射し込む真っ白な光が、ふんわりと部屋中を満たしている。




「とてもきれいな清々しい朝で。

君が目の前にいて。

一緒にご飯を食べて。


………ありきたりかもしれないけどさ、幸せを形にしたら、こういうことかな、って、急に思ったんだ」




先生が視線を私に戻した。




「好きだよ、智恵子」




なんでもないことのように、さらりと先生が言った。



私はまた泣きそうになる。




この人にとって、『好き』という言葉は、こんなにも簡単に口に出せるものなんだ。



今まで何度、その言葉を口にしてきたんだろう。



先生の周りにいた数え切れないほどの女たちの姿を思う。


きっと先生は、彼女たち皆にその言葉を囁いたんだろう。



『人間は恋をするために生まれてきた』と言う先生は、当たり前のように人を『好き』になり、『好き』だと告げてきたんだろう。




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