~color~サイドストーリー



笑っていればいい……


あたしは笑っていればいいんだ……


そうずっと思い生きていた。


どんな辛いときも苦しいも、ただただ笑っていればいいと。



翼の言っていた意味はそんなことじゃないことくらい、ずっと分かっていた。



それでも、あたしは飛翔くんと出逢い、また少しづつ人間らしく変わって行った。



ほんの数か月の夢の中の出来事。



あれは、きっと少しだけ長い夢を見ていたんじゃないかって最近凄く思ってしまう。




10年経った人形みたいなあたしに、翼が少しだけ人間の世界を与えてくれたプレゼント。




たった数ヶ月



あたしは人間らしくいられて、いくつも持っていた仮面を剥がし、重い鎧さえも置くことが出来ていた。




残念なことに夢から覚めてからも、記憶というものがはっきりと残っていて、少しだけまだ悲しむことがある。



苦しむことがある。



だけど、二度と戻ることの出来ない夢の中の世界での出来事は、あたしの胸の奥にひっそりと閉じ込め蓋をした……








そう、あたしは二度、


つばさを失った……。




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