鬼姫マラントデイズ
私がそう言うと、律希はちょっと、ぽかんとした顔になった。



けどそれもすぐいつも通りの表情に変わって、気のせいかな?と思えるほどだった。




「あぁ、そうだな…俺の父さん、滅希はかなり強いし。

鬼の妖力を人一倍嗅ぎつけるのがうまいと思うし」




「そうだよね!

じゃ、私が2人には言っておくから。バイバイ!」




手を振ると、振り返してくれた。



その数秒の出来事に心が浮き立ちながらも、私は律希から放れた。






自分の席についてからもう一度教室の入り口を見たけれど…もう、律希はいなかった。





「…あ、凛。ちょうどいいところに。

今日律希、会議だってさ」










川のように緩やかに描かれた、浅葱色と藤色の螺旋。


池の中で輝く、真紅の金魚と漆黒の金魚。





「…どっちにしよう」





私は今、律希の家が『表』でやっている呉服屋に来ていた。



そこで、2つの可愛い着物を見つけて…どっちか悩んでいるのだ。





「ん〜、決めた!こっち!」




ちょっと大人っぽい、螺旋が描かれた白地の着物を選ぶと、


つい10分前ぐらいから一緒に着物を選んでくれていた40代ぐらいの綺麗な品のある店員さんが「かしこまりました」と言って、私が選んだ着物を丁寧に運び出した。




そのまま試着室で着て帰ると告げると、店員さんは「作用でございますか」と言って、優しく微笑んだ。



…綺麗な人だなー…



女性店員さんは皆着ている、薄桃色の地味な着物でさえ着こなす美しさ。




私、将来こんな感じの人になりたい。




無理か?




無理か。








ちょっと虚しくなりながらも、試着室で着替えて店を出ようとした。



女性店員さんは見送ろうとしてくれたけど、別のお客さんに呼ばれて行った。




ううん、忙しいんだろうなぁ。結構有名なところらしいしね、ここ。





そんなことを思って、出口の戸に手をかけたその時…



・・・・・・・・・・・
私が触れてもいないのに、すぅっと戸は横に引かれた。








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